電子情報通信学会は,担当する分野における知識を体系化して保持・記録し,これを様々な活用に供する任務を担っている.これまではハンドブック出版,教科書出版そして単行本出版を通じてこれを果たしてきた.
ハンドブックの出版では,電子情報通信技術の進歩と分野の広がりにより,総合版ハンドブックは版を改めるに従って膨大なものとなり,昭和63年3月に発行された現在の総合版ハンドブック「電子情報通信ハンドブック」は,3300ページに及ぶ大部なものとなっている.このため,全分野をカバーする総合版ハンドブックとは別に学会として先端を維持する重要分野については「情報セキュリティハンドブック」など部門別ハンドブックを発行している.また,平成10年11月にはエンサイクロペディア版として従来の総合版とは異なる性格の「エンサイクロペディア電子情報通信ハンドブック」が発行されている.
一方,近年におけるITの進歩は,データベース検索機能など,従来は困難であった知識活用を可能にした.総合版ハンドブックの電子化は,上記の学会の任務を果たすためにも,また,会員サービスや社会貢献をより充実させるためにも,今後の方向であると考えられる. 合版ハンドブックの電子化は,上記の学会の任務を果たすためにも,また,会員サービスや社会貢献をより充実させるためにも,今後の方向であると考えられる.
ハンドブック幹事会では,総合版ハンドブックの電子化について,ソサイエティや研究専門委員会の協力を得ながら,モデルケースの検討も含めて慎重に審議を行い,次の方針で進めることとした.
学会におけるこれまでのハンドブック出版事業には,1) 担当分野の知識の体系化を学会の責任において行うこと,2) これを会員サービス並びに社会貢献の観点から然かるべき媒体により公表すること,の二つの役割が一体化されていたが,電子版ではこれを分離することが可能である.
まずは,知識の体系化,すなわち「知識ベース(Knowledge base)の構築」を学会の事業として行う.知識ベースが整備されていれば,その一部あるいはすべてを適切な媒体で公表することが可能になる.その公表は必ずしもWebに限ることなく,必要に応じてこれまでの紙版の出版も含めて,その時点でのビジネスモデルに基づいて行ことになる.またWebで公開する場合も,その時点での最新技術を活用することができる.
更に,知識ベースの構築とその公表の方法を分離することにより,公表形態に制約されることなく,知識ベースの柔軟な更新(メンテナンス)も可能になる.知識ベースの運営が順調に推移し,その利用実績が挙がった暁には,その収入の一部を学会にフィードバックさせることも,夢ではない.いずれにせよ,このような知識ベースの構築と運営は,会員への新しいサービス提供による学会活性化と社会貢献に資することに最も重要な意義があると考える.
知識ベースは下記の18群,全140編となっており,編内は,章/節/項の構成である.
S1群 情報環境とメディア(全9編)
S2群 ナノ・量子・バイオ(全7編)
S3群 脳・知能・人間(全11編)
S4群 宇宙・環境・社会(全6編)
1群 信号・システム(全12編)
2群 画像・音・言語(全12編)
3群 コンピュータネットワーク(全7編)
4群 モバイル・無線(全6編)
5群 通信・放送(全10編)
6群 コンピュータ- 基礎理論とハードウェア(全7編)
7群 コンピュータ- ソフトウェア(全7編)
8群 情報入出力・記録装置と電源(全5編)
9群 電子材料・デバイス(全10編)
10群 集積回路(全9編)
11群 社会情報システム(全9編)
12群 電子情報通信基礎(全6編)
13群 標準・知財・法規(全3編)
14群 歴史・年表・資料(全4編)
知識ベースは図のような体制で構築する.
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